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大阪高等裁判所 昭和59年(行コ)39号 判決 1985年3月20日

大阪市城東区東中浜二丁目六-二三

控訴人

新井惟弘

右訴訟代理人弁護士

寺沢勝子

河村武信

西枝攻

大阪市城東区中央二丁目一三番二三号

被控訴人

城東税務署長

大野陽三

右指定代理人

布村重成

足立孝和

幸田郁夫

盛田正昭

主文

1  本件控訴を棄却する。

2  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

一  控訴代理人は、「1 原判決を取消す。2 被控訴人が、昭和五四年三月一二日付でなした控訴人の昭和五〇年分所得税に関する更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分並びに昭和五四年三月五日付でなした控訴人の昭和五一年、昭和五二年分の所得税に関する各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分はいずれもこれを取消す。3 訴訟費用は第一・二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は、主文と同旨の判決を求めた。

二  当事者双方の主張関係は、次に訂正するほか、原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用し、証拠関係は、原審及び当審における本件記録中の証拠目録記載のとおりであるから、これを引用する。

原判決二枚目表六行目の「あって」から八行目の「会員で」までを削除し、同三枚目表四行目から八行目までを「請求原因1ないし3の事実は認め、同4の事実は争う。」と改め、末行の「五二年分」の次に「(以下、一括して「本件各係争年分」という。)」を、同六枚目裏三行目の「おける」の次に「申立ての」をそれぞれ挿入し、同一七枚目裏一二、一三行目の「点にこそ」を「もので」と改め、同一八枚目裏初行の「被告は」から「いるが、」までを削除し、同二一枚目表一一行目の「下請けを」を「下請に」と、同二二枚目裏初行の「自らと」を「自ら」と、裏八行日の「は行って」から一〇行目の「しかも」までを「を行い、また」と、同二五枚目裏七行目の「付器」を「計器」と、同二六枚目裏七行目の「三一」を「三二」とそれぞれ改める。

理由

一  当裁判所も控訴人の請求は失当として棄却すべきものと判断するものであって、その理由は、次に訂正・付加するほか、原判決説示と同一であるから、これを引用する。

1  原判決五〇枚目表二行目の「原告が」から二行目の「及び、」までを削除し、四行目の「2」を「1ないし」と、一一行目の「昭和」から一二行目の「五二」までを「本件各係争」とそれぞれ改め、裏末行の「、その他」を削除する。

2  同五一枚目表初行から三行目の「算出」までを「断念し、控訴人の取引先等を調査したが、控訴人の本件各係争年分の所得金額の実額の把握ができなかったので、控訴人と類似する他の同業者の所得金額から、控訴人の本件各係争年分の所得金額を推計」と改める。

3  同五二枚目裏八行目の「(4)」を削除する。

4  同五三枚目表二行目の「乙」の次に「第五号証、同」を、三行目の「ないし三、」の次に「弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる同第七五ないし第七七号証」を、裏一二行目の「乙」の次に「第五号証、同」をそれぞれ挿入する。

5  同五四枚目表二行目の「第五」を「第六」と、裏四行目の「まで」を「までで」とそれぞれ改める。

6  同五五枚目表四行目の「昭和」から「五二年分の」までを「本件各係争年分については、」と、裏四行目の「一・四二」を「一・三二」と、六行目の「業種」を「業態」とそれぞれ改める。

7  同五六枚目表四行目の「何らの主張立証もない」を「、控訴人は何らの主張立証もしない」と改め、七行目の「全趣旨に」の次に「より」を挿入し、一〇行目の「八万三〇〇〇」を「八万二〇〇〇」と、裏七行目の「事業者」を「事業」とそれぞれ改める。

8  同五七枚目裏四行目の「している」から六行目までを「する。そして、前掲甲第六、七号証(昭和五一年分及び昭和五二年分の損益計算書)並びに原審及び当審における控訴本人の尋問の結果は概ね控訴人の右主張に副うものである。」と改める。

9  同五七枚目裏七行目から六四枚目表一一行目までを次のとおり改める。

1 そこで、以下この点について判断する。

2 本件においては、昭和五〇年分の仕入金額、経費に関する実額について控訴人の具体的な主張はなく、原審における控訴本人の尋問の結果によれば、甲第八号証は控訴人が昭和四九年から昭和五三年にかけて取引先に支払ったとされる仕入金額、外注費(裁断、縫製、穴かがり、ぼたん付け、仕上げ、その他)や従業員に支払った給料等を記載したノートであることが認められるのであるが、同号証中の昭和五〇年分の記載については、これを裏付ける領収証等の資料は全く提出されていないうえ、後記4の認定に照らしてそのまま信用することができず、また、この点に関する原審及び当審における控訴人の尋問の結果も信用することができない。

3 原審における控訴本人の尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、甲第六、第七号証は、控訴人が本件審査請求に際し国税不服審判所に提出したものであることが認められるところ、控訴人は、右本人の尋問において、同第六、第七号証は、同第八号証、第一一号証(昭和五一年分の立証のために提出するもので、枝番を付した領収書等一二三通)、第一二号証(昭和五二年分の立証のために提出するもので、枝番を付した領収書等一〇五通、以下、第一一、第一二号証とも枝番を付したもの全部を一括して「第一一号証、第一二号証」という。)に基づいて作成したものであると供述し、同第八号証及び第一一、第一二号証を証拠として提出する。

しかしながら、同第八号証に記載されている昭和五一年分の合計額は五一〇二万九三八四円、昭和五二年分の合計額は六二一六万五八六七円であり、同第一一、第一二号証の領収書等も仕入れ、外注に関するものに限られ、それらに記載されている金額の合計も昭和五一年分(同第一一号証)は三〇三四万八二九八円、昭和五二年分(同第一二号証)は二七二一万八三八五円に過ぎないうえ、以下述べるとおり同第八号証の記載や同第一一、第一二号証の一部の記載がそのまま信用し難いことを考え合わせると、同第八号証、第一一、第一二号証に基づき作成されたとする同第六、第七号証の内容も信用できない。

4 甲第八号証について

(一)  甲第八号証には、藤俊美(藤裁断)に対する支払として、昭和五一年分合計三六万九一四〇円、昭和五二年分合計一〇九万六三八五円の記載があるが、弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる乙第三〇、第三一号証、第四五号証によれば、大阪国税局は控訴人との取引について藤俊美に対し照会したところ、同人から控訴人とは昭和五一年には取引がなく、昭和五二年には九四万六九四五円の取引があって同年中に七四万八五九〇円の支払を受けた旨の回答を得たことが認められ、甲第八号証の記載と右回答内容とは異なっている。

(二)  甲第八号証には、若竹シャツ株式会社に対する支払として、昭和五二年九月分一三万三九八〇円の記載があるが、弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる乙第四二号証によれば、大阪国税局は控訴人との取引について同会社に照会したところ、同会社から控訴人とは昭和五一年四月に一一万二五〇〇円の取引があって同月中にその代金の支払を受けたのみで、昭和五二年には取引がなかった旨の回答を得たことが認められ、甲第八号証の記載と右回答内容とは異なっている。

(三)  甲第八号証には、田中(田中敏雄)に対する支払として、昭和五一年分合計二二三万三六七五円、昭和五二年分合計三八七万四六七五円(甲第七号証参照)の記載があるが、弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる乙第四七ないし第四九号証、第五一号証によると、同人は昭和五一年七月一〇日に死亡し、その事業を妻ふ志ゑが継承したものの極めて小規模なものとなったことが認められるので、右田中敏雄の死亡後においても田中ふ志ゑと甲第八号証記載のような取引があったとは認め難い。

(四)  甲第八号証には、右田中敏雄(田中ふ志ゑ)の分とは別に田中に対する支払として、昭和五二年一〇、一一、一二月分として合計三五万八九八〇円の記載があるが、弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる甲第九号証、乙第五二号証によれば、右田中は田中宏であり、大阪国税局は控訴人との取引について右田中宏に照会したところ、同人から控訴人とは本件各係争年中には取引がなかった旨の回答を得たことが認められ、甲第八号証の記載と右回答とは異なっている。

(五)  甲第八号証には、早瀬秋雄に対する支払として、昭和五一年分合計一七万五一四〇円、昭和五二年分一三三万七四四五円の記載があるが、弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる乙第五〇号証によれば、同人は控訴人から昭和五一年、五二年中には縫製加工の注文を受けた事実のないことが認められ、甲第八号証の記載と右事実とは異なる。

(六)  甲第八号証には、中川進に対する支払として、昭和五二年分合計一〇万三九〇〇円の記載があるが、弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる乙第五三号証によると、大阪国税局は控訴人との取引につき中川進に照会したところ、同人から昭和五〇年八月同人の個人事業を中進株式会社に組織替えしたが、控訴人と一切取引がない旨の回答を得たことが認められ、甲第八号証の記載と右回答とは異なっている。

(七)  甲第八号証には、中上秀明に対する支払として、昭和五二年分合計二一七万二四六五円の記載があるが、弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる乙第四三号証によれば、大阪国税局は控訴人との取引について中上秀明に照会したところ、同人から控訴人とは昭和五二年中に八七万二四六五円の取引があった(なお、回答内容は甲第八号証記載の金額よりも三月分については一〇万円、四月分及び五月分については各三〇万円、六月分及び八月分については各二〇万円、九月分及び一〇月分については各一〇万円それぞれ少ない金額である。)旨の回答を得たことが認められ、甲第八号証の記載と右回答は異なっている。

(八)  成立に争いのない甲第一一号証の一ないし一一、同号証の三の一ないし八、第一二号証の一の一ないし八、同号証の九の一ないし一一、弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる乙第三九、第四〇号証によれば、クラウン紙器株式会社、浜田商店との取引について、甲第八号証の記載は大阪国税局の調査結果とも、領収書の記載とも一致しないものが多数あり、また、他にも甲第八号証の記載とその他の同第一一、第一二号証の領収書等の金額と一致しないものがあることが認められる。

(九)  成立に争いのない甲第一一号証の八の一ないし三、同号証の一一の一ないし三、同号証の一三、同第一二号証の一一、同号証の一二の一、二によれば、控訴人は森本勇、梶本株式会社、八尾キーパー株式会社、山下縫糸株式会社から物品を仕入れ、その代金を支払って領収書を受領したものもあることが認められるのに、甲第八号証に記載していないほか、成立に争いのない甲第一二号証の五の一、弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる同第一一号証の二二に原審における控訴本人の尋問の結果によると、甲第八号証の記載中昭和五一年三月分と四月分で原田(アマミ)関係が七万四九〇〇円、昭和五二年二月分と三月分で糸屋関係が一四万六〇四七円の重複記載のあることが認められる。

以上のとおり、甲第八号証の記載には、種々の不正確な点や疑問点があるうえ、支出金額として記載のあるものについて裏付けとなる領収書等が全くないもの、あっても甲第八号証の記載金額に満たないもの(外注費関係については別表(一二)<2>、<3>欄参照)があって、甲第八号証の記載は全体として信用できないものである。なお、甲第一五号証の一ないし一一は、弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる乙第七八号証の一及び当審における控訴本人の尋問の結果に照らして、甲第八号証の裏付け資料とはなし難い。

5「甲第一一、第一二号証について」

10 同六四枚目表一二行目の「前掲」を「弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる」と、裏初行の「同号証」を「右各号証」と、六行目及び末行の各「前掲」をいずれも「弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる」と、七行目の「五四」を「五九」とそれぞれ改める。

11 同六五枚目表初行の「領収証」を「各領収書」と、四行目から裏五行目の「主張の如く、」までを「6以上の次第であって、甲第八号証の記載は全体として信用できず、同第一一、第一二号証の一部に不備な点があり、これらに関する原審及び当審における控訴本人の尋問の結果もそのまま信用できないことを考え合わせると、甲第八号証、同第一一、第一二号証は控訴人の本件各係争年分の仕入金額、外注費その他の経費の実額の全ぼうを把握するに足りる資料とはなし難く、他に」とそれぞれ改める。

12 同六六枚目裏一〇行目の「また」から末行の「右以外の」までを「縫製、」と改める。

13 同六七枚目裏一〇行目の「弁論」から一一行目の「第七一」までを「同第七五」と改める。

14 同六八枚目裏初行の「また、」から五行目までを「Aは控訴人に比べて売上金額に対する外注費の割合の低いことが窺われるけれども、後記5の認定に照らしてAと控訴人とが類似の同業者でないということはできない。」と改める。

15 同六九枚目表一〇行目の「弁論の」から一一行目の「第七二」までを「同第七六」と改め、裏六行目の「約」の次に「一四ないし」を挿入する。

16 同七〇枚目表八行目の「弁論」から九行目の「第七三」までを「同第七七」と改める。

17 同七一枚目表八行目の「七一ないし第七三」を「七五ないし第七七」と、裏初行の「消却」を「償却」とそれぞれ改め、末行の「約」の次に「一四ないし」を挿入する。

18 同七二枚目表七行目の「であるのに対し」を削除する。

19 同七三枚目表三、四行目の「甲第七一ないし第七三」を「同第七五ないし第七七」と改める。

20 同七四枚目表五行目の「右原告の」から六行目の「しても、」までを削除する。

二  よって、前記判断と同旨の原判決は相当であって、本件控訴は理由がないから、民訴法三八四条によりこれを棄却することとし、控訴費用の負担につき同法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 仲西二郎 裁判官 長谷喜仁 裁判官 下村浩蔵)

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